90年代テクノスーパースター列伝 Vol.2 Joey Beltram:Part 1

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90年代に活躍したテクノアーティストをピックアップしてその軌跡を紹介する企画
90年代テクノスーパースター列伝。

第二回は時代に合わせそのスタイルを変容させつつも、
数々の歴史的名曲を残してきたJoey Beltramです!

えー、私事で大変恐縮なのですが
「テクノのアーティストで誰が好きなの?」と聞かれると
真っ先に答える名前が、このベルトラム大先生だったりします。
そんな事もあり、思い入れからくる脱線も
少々あると思いますが、そこはご勘弁を。

では早速スタート!

Joey Beltram 〜イントロダクション〜




「俺は他には無い物をやろうとして、他とは違うものを作っていただけだ。
結果としてメディアにテクノってラベルをはられてしまったけど、
俺は今でもテクノシーンなんて興味ない。自分がテクノだとも思っていない。
俺は頭のなかにある音楽を作り続けているだけだから。」
(ele-kingインタビューより)



いやー初っ端からインタビューの引用ですが
この発言、痺れますなぁ〜。

普通のアーティストがこんな事言っちゃうと
単なるビッグマウスになってしまいがちですが
初期のベルトラムのリリースを追ってみると
上記発言があながち虚勢では無い事が伝わってきます。

ベルトラムの初期作品群は、全てとは言わないまでも
殆どが流行に合わせて作られたのでなく
自分の「頭の中」で鳴ってる曲をひたすら具現化、
その膨大な曲の中から時代にフィットする曲、
もしくは時代をリードする曲が
色々なレーベルにピックアップされ
リリースされる事で評価されていったのです。

そんなベルトラムの初期作品の名曲と
そこに至るまでのルーツとも言える作品を紐解きましょう。

Joey Beltram 胎動編



ジョーイ ベルトラムはNYのクイーンズ出身。

今でこそUSのテクノと言えばデトロイトというイメージが強いと思いますが
90年代にはNYがテクノシーンの中でも結構な影響力を持ってました。
(他にもミネアポリスだったりカラマズーだったり90年代USは元気でした…)
そんなNYの中でもフランキー ボーンズ、デーモン ワイルドと並んで
シーンの中心人物として活躍していたベルトラム大先生。
NYのテクノアーティストの中でも最も成功した一人といえるでしょう。
(なんたる英文直訳のような表現ざんしょ。)

元々は初期ヒップホップでクラブミュージックに興味を持ち始めたベルトラム君。
DJを始めると同時に初期ヒップホップカルチャーの重要な一要素だったグラフィティー
(スプレー缶で壁に勝手に絵を買いちゃうストリートアートってやつですな)
にもハマリ、なかなかの腕前だった模様。
(その腕前は自身の曲のPVでも披露されてたりします。)
が、程なくしてトラック作りにも挑戦するようになると
グラフティーよりも曲作りの方に興味はシフトしていきます。

その頃作ったと思われるトラックがこれ

Direct – Let it ride (1990)


アフリカ・バンバータから連なる
初期ヒップホップっぽさ満載なこのトラック。
ナイスなヒップホップ、もといナイスエレクトロですな。

リリース自体は90年なんだけど
昔作った曲が数年後にリリースされるのが
ザラだったベルトラムとしては多分
相当初期に作ったトラックなんじゃないでしょうか?
(もしくは、その頃の経験が色濃く反映されたトラックね。)

このトラックからも判るように、ヒップホップというよりは
エレクトロに興味を持っていったベルトラム少年。
その後サンプリングベースに移行していたったヒップホップへの
興味はどんどん薄れていきます。

だが、そんな時ベルトラムは運命的に一つに音楽に出会います。

それがシカゴから生まれたハウスミュージック!

シカゴ・ハウスの中でも、トラック物やジャックハウスと言われるような
初期の実験的なトラックに夢中になったベルトラムは
本格的にトラックメイキングを開始。
やがて地元NYで生まれたハウスレーベルNU Grooveから
Code6名義でリリースを果たすのです!

Code 6 – Forgotten Momentst (1990)


実質のデビュー・シングルだけあって
ベルトラムらしいオリジナリティーは
まだ発揮されていない感じ。
Traxxの影響を感じさせるリズムやピアノの
メロディーライン等、所々に拙さがあるものの
夢見心地なまでの上モノシーケンスなんかは
光る物がありますな。
(このセンスが後のアルバム
Aonoxに通じてるのかもね。)

この後ベルトラムはそのセンスを買われて
NU Grooveのエンジニアとしても活動するようになり
その作品のクオリティーとセンスに更なる磨きをかけます。

そして「頭になかにある音」を
次々と形にししていくようになり
ベルトラムならではのオリジナリティーを
発揮するようになるのです。

joey Beltram 覚醒編


曲作りに覚醒し自身のオリジナリティーを
バンバン発揮し始めたベルトラム。
だがしかし、どんどん作られる時代を先取りした作品達は
あまりに斬新過ぎて、地元NY更に広がってUSには
なかなか理解者が現れなかったようです。
う〜む、孤高の天才ゆえの悩み。

が、世界は広い!
そんなベルトラムの斬新なトラックを
リリースしてくれるレベールがベルギーから現れれました!

それが後のテクノ三大レーベルと呼ばれる事になるR&Sです。

当時はレイブ向けトラックをバンバンリリースしていて
ノリノリだったR&S。ここからリリースしたシングルが
ベルトラムの名前を世界に轟かせる事になったのです。

Joey Beltram – Energy Flash (1990)


うーん。泣く子も黙るテクノクラシックスですな。

世はレイブ全盛の時代にリリースされたこの曲。
当時はまだテクノというジャンル自体が定着していいなかったので
「メタルハウス」なんてムチャムチャなジャンルで呼ばれてました。
今聞いても完全に「テクノ」です。

当時デトロイトテクノなんか知りもしなかったと嘯くベルトラムですが
状況を考えると、あながち話を盛っているわけでは無いのかもしれません。
が、そのレイブの文脈ともハウスの文脈とも違う
オリジナリティー溢れるトラックはデトロイトのデリック・メイにも響いたようで
デリックの自身のレーベル、トランスマットからライセンスリリース
される事になります。
(ちなみにこれはR&Sとトランスマット間で交わされたライセンスなので
ベルトラム本人は特に関与してなかった模様。)


そして94年には同じくテクノ三大レーベルと言われていた
名門ワープからもシングルをリリース。
デザイナーズ・リパブリックによるジャケも素晴らしい
そのシングルに収録された名曲がこれ。

JOEY BELTRAM – Drome (1994)


ああ、なんてかっこいい曲なんでしょ(号泣)
正直初めて聞いた時は僕も「なんだこのトランスっぽいブレイクは?」
なんて、思ったりもしたものですが、聞けば聞くほど良さが伝わる
スルメの如きこのトラック。この曲あれば飯何杯でも行けるってヤツです。

イントロから徐々にビルドアップしていくリズムは、
複数のリズムマシンを組みわせ使うという
シカゴのトラックスから伝わる伝統(?)を受けつぎつつも、
ハウスのリズムの組み方とは明らかに違うそれは
デリックのリズムプログラミングに匹敵する
もう職人技と言える巧みさ。

リズムのビルドアップで盛り上がったテンションの頂点で
件のシーケンスが入ってきたら、そらぁフロアのテンションは
天井を突き抜けまっせ!

おっとっと。ちと思い入れが暴走してしまいましたが
盤自体がレアなので知名度こそ「Energy~」に負けるものの
初期のベルトラムの三大名曲の一曲とさせて頂きます!
(僕が勝手が決めました)


更にベルトラムは、その人生に多大なる影響を与えた
シカゴハウスのルーツとも言える名門レーベル
トラックスからもリリースを果たします!

The Beltram Re-Releases 1989-1991

タイトルにあるとおり、84-89年にかけて作った作品を
コンパイルした2枚組なのですが、これまた名曲いっぱい。
本当は90年にリリースする予定がレーベルのイザコザで
リリースが94年まで伸びてしまったとの事ですが
その年代に作られたとはにわかに信じがたいトラック。
いや、リリース当時を考えれば4年越しの発売でも
まだ時代を先取りしていたと言っても大袈裟では無い作品群。

そんな中でも初期ベルトラム三大名曲最後の一曲のこれを紹介しましょう!

JOEY BELTRAM – The Start It Up


あー、カッコイイ。血湧き肉踊るとはこのトラックの為に
用意された言葉なのか?ってくらいかっこいい。

TR-909のタイトなリズムにパーカションのサンプルを組み合わせた
元祖トライバルハードテクノと呼ぶべきトラックは、
今でこそハードトライバルの曲なんてたくさんありますが
これが原点と言ってもいいんじゃないかな?

これを80年代末に作ってしまっていたのは
天才としか言いようがありません!
後に生まれたトライバルハードテクノで
これに匹敵する曲がいったい何曲あるんだろうか…。



と、初期のベルトラム作品を振り返ってみましたが
さらっと巡っただけで、テクノの歴史に残る
名曲が3曲も出てきてしまいました。

普通のアーティストだとこの後はボチボチの曲を
リリースして徐々にフェードアウト…
なんて事になりそうなもんですが、
ベルトラム大先生はこれで終わりません!

更にテクノアーティストとして進化していった90年代中盤と
驚きの変貌を遂げた90年代末と、まだまだ名曲を残してます!

ベルトラムはどう進化してどう変わっていくのか?
それは次回のPart 2にて。
乞うご期待!




えっ?初期作品はまだまだあるだろうって?
兄さん通だねぇ。
そんな兄さんの為にこのベルトラム編は
Part 3まで続く予定でっせ。
ベルトラムのマニアックかつマイナーな
曲に期待してる人はPart 3まで
お付き合いよろしく!


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DJ U

DJ Uでぃーじぇーゆー
とにもかくにもテクノが好き。
ミニマル~クリックがテクノならハードテクノもテクノ。デトロイトだってダブステップだってエレクトロだって、オイラに言わせりゃ皆テクノ。
今の時代の空気を取り込みつつも、そんな”テクノ”を新旧関係なく紡いで新しい響きを作れたらなぁと。「最新ミニマルでストイックなグルーヴを…」みたいなのが好きな人は他にいくらでも良いDJがいるはずなのでそちらをどうぞ。
「四の五の言わず、テクノが好き」って方。一緒に楽しい時間を作りましょう!