ASET22 × UNDERGROUND Kwaidan RESISTANCEに向けて、ゲル博士に新作の短編小説を執筆して頂きました。
ありがとうございます。
私はただのハゲです。
最近、不思議な体験をしたのでこの場をお借りしてシコシコと書き綴ってみたいと思います。
これは人様には言っていないことなのですが、私は犬の糞を見るのが好きです。犬の糞は色々なことを教えてくれるからです。
まともな人間がこれを知ったら、もう私のことを避けて通るでしょう。だから誰にも言っていません。しかし私は胸を張って言います。犬の糞が人間の全てだと。
先日も、いつものように犬の糞を観察していました。
「これは結構犬にしてはいいものを食べてるな。ふむふむ。このレベルだと食費は月3万5000円ほどか」と考えていると、後ろから死神のような甲高い声が聞こえてきました。
「安いよ。安いよ。音楽が安いよ」
私がそっと振り返ると、そこには5cmくらいの小さな人間があぐらをかいて座っていました。その前には大量のレコードが並んでいて、どうやらそれを販売している様子でした。
「お兄さん。どう?買ってかない?音楽が安いよ」小さな人間は私に話かけました。
残念なことに、私は音楽というものにあまり興味がありません。「めんどうなものに出会ってしまったなー」と思いながらも、「これは一体どんな音楽なんだい?」と、とくに感情も込めずに機械的に訊ねてみました。
「これはね、今はもういなくなってしまった人が残していった音楽なんだ。そいつはレコードを沢山集めていてね。でももう持ち主がいなくなってしまったから、こうやって売っているんだよ」
私は音楽の内容について訊ねたつもりだったのに、この小さな人間はレコードがこうして売られている経緯について語りはじめました。私は犬の糞のことで頭がいっぱいだったので、早めに話を切り上げようと思い、鼻をかんだティッシュをポケットから取り出して、小さな人間に投げつけました。
「いててっ!痛いじゃないか!なにをするんだい!これはフロッピが残していった大切な音楽なんだからな!ハゲ!死ね!」と突然言葉遣いが乱暴になり、走って逃げていってしまいました(私はドMなので、罵倒されて少し興奮してしまいました)
その日はまた犬の糞をいくつか観察し、家に帰ってからお母さんが作った晩御飯を食べて寝ました。
それから2日後くらいのことでしょうか。突然尿道に激痛が走り、泣きながら病院へ行ってみると、なんと尿路結石ができていました。庭には綺麗なバラが咲きました。
おまけにED(勃起不全)になってしまい、そのうえたまにレコードが回転している幻覚も見るようになってしまいました。
これはあの時、あの小さな人間に酷いことをしてしまったから罰があたってしまったのでしょうか。
そんなことは考えても仕方がないし、まだ尿道が少し痛む気がするし、なにより身体が少しだるい。仕事を探すのは来年からにしよう。そう心に誓いました。
めでたしめでたし。
(原文ママ)